仕事の余白

仕事の余白

奥キヌ子代表『仕事の余白』連載中! 第2回掲載日「新薬の開発資金」

琉球新報社:2007年11月18日

 

薬の開発には膨大な資金と時間がかかる。  
 二〇〇五年度の厚生労働省医政局の資料によれば、一つの新薬の開発には九~十七年、一品目約五百億円を要するという。  
 製薬業に門外の私が薬の開発に関ったのは、中国にある痔の治療薬(注射剤)に魅せられたからだ。とにかく薬効がすごい。沖縄で製造販売ができないかと考えた。  
 学生の頃、特異な行政環境の沖縄にじれったさを感じていた。沖縄に生きる者なら一度ならず郷里の将来を憂えたことがあるはず。このままでいいはずがない。何か産業を興さねばとの思いが常にあった。
 この薬なら現に中国で使用され臨床もある。輸送コストもかからない。まさしく沖縄の知的産業に成り得ると心が躍った。
 ところが、日本の厚生労働省は甘くなかった。中国での認可は通用せず、新薬として開発はイロハのイから始めなければならなかった。
 かくして無謀にも新薬開発に足を踏み入れたのだが、果たして念願の製造承認が得られたのは、開発から十五年目、開発費は共同開発社と双方で四十億円を計上した。新規物質からの創製ではないのでこの費用で収まったが、しかし高く険しい山だった。
 初めて相談に伺った厚労省の技監が発した言葉が今も耳に残る。
 「資金は、奥財閥か何かで調達するのですか。」