クルクミン研究室

クルクミン研究室

スクワレン・ピペリン配合クルクミンの吸収とバイオアベイラビリティ(2024.01.17更新)

クルクミンは抗炎症作用、抗酸化作用、抗菌作用、血圧降下作用など、多くの研究報告が行われ、その有用性は広く認められており、既に、肝機能改善、アルコール代謝、美容効果など、様々な分野で利用されていました。

しかし、クルクミンは経口摂取で応用する際の一番の課題として、その低い生物学的利用能(Bioavailability)があげられ、低吸収性への対策をしていない場合は経口摂取したクルクミンのほとんどが体内に吸収されず、効果も限定的でした。脂溶性のクルクミンは水に溶けにくく、単体で摂取すると消化管で吸収されずにほとんどが体の外に排出されてしまうのです。

これに対して吸収促進のためのリポソーム製剤の応用、細粒化、クルクミンリン脂質複合体の応用などが行われています。

 

スクワレン・ピペリン配合によってクルクミンの吸収が大幅に改善

レキオファーマ社の研究グループでは、クルクミンの生体内での利用率を高めるために、鮫油のスクワレンと黒こしょうのピペリンを用いることにしました。

スクワレンに溶けたクルクミンは腸内で安定で、小腸粘膜から容易に吸収され、ピペリンにより小腸壁での代謝を阻害することで、吸収促進や生物学的利用能(BA)を大幅に改善する製法技術を開発し、製法特許を取得しました。(特許第4012894号)

レキオファーマ社の製品では、この技術を使用し、吸収率を高めたクルクミンがしっかり身体に届くことで、様々な健康維持のために役立てるよう工夫されています。

 

スクワレン

スクワレンは不飽和脂肪酸のひとつで、タラやサメ、エイの肝臓に含まれる肝油から抽出しています。

サメやエイなどの軟骨魚類は浮き袋を持たないため、海水より比重の軽い油を肝臓に蓄え、浮力を得ています。

スクワレンは人間の体内では、皮膚、リンパ節、骨髄に特に多く存在します。

脂溶性ポリフェノールであるクルクミンは、そのままだと腸管からほとんど吸収されない(クルクミンの吸収のメカニズム参照)ことがわかっています。

スクワレン(鮫油)で溶解されたクルクミンは加水分解安定性を高め、クルクミノイドの経口吸収率を飛躍的に高めます。(特許第4012894号)

ウコンとスクワレン配合剤のモデルラットによる研究結果

Wister系雄性ラット(4週齢)にスクワレンのみ、ウコンのみ、ウコンとスクワレン(1:2.5) の各混餌を7日間摂食させ、摂食開始から6日後D-GalNac/saline 350mg/kg を腹腔内投与し肝障害を誘発した。惹起22時間後に採血を行い、ALT、ASTを測定した。
ウコンとスクワレンを配合した混餌群に、他単独投与群と比較して有意に肝機能を改善する作用が認められた。

ピペリン

ピペリンは、アルカロイドに分類されるカビシンとともにブラックペッパーの辛みのもととなっている成分です。ピペリンやカプサイシンの辛みは、感覚神経に発現している温度受容体TRPV1(TRPVイオンチャネルファミリーのひとつ)の活性化によりもたらされると言われています。

ピペリンはまた、生体異物を代謝する酵素の主要なもののひとつであるシトクロムP450や細胞膜上に存在して細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行うP-糖たんぱく質のはたらきを阻害します(Bhardwaj, R. K.; J. Pharmacol. Exp. Ther. 2002, 302, 645-650)。

ピペリンが薬物代謝に重要な他の酵素をも阻害した動物実験の結果が報告されています。(Atal, C. K.; J. Pharmacol. Exp. Ther. 1985, 232, 258-262.、Reen, R. K.;Biochem. Pharmacol. 1993, 46, 229-238.)

この図は、黒胡椒成分のピペリンを併用するとクルクミンの血中濃度が著しく上昇(約2000%)することを証明したものです。

被験者: 健常人各8名
被験物質: クルクミン単独=クルクミン2g
クルクミン+ピペリン=クルクミン2g+ピペリン20mg
血中濃度測定:経口服用後のクルクミンの血中濃度を測定
(Shoba G. et al : Planta Medica 64 , 353-356,1998)

ピペリンが生物学的利用能(BA)を向上させるのは肝臓ではなく腸壁での作用であると考えられています。その理由として、腸壁を通る経口投与では、グルクロン酸抱合体が主代謝物ですが、非経口投与では、検出されません。 肝臓でのグルクロン酸抱合であれば、両者にこれが検出されるはずだからです。

ピペリンは10 ~20 mgの量で小腸壁でのクルクミンのグルクロン酸抱合を阻害することが報告されていますが、腸壁局所での作用でもあることから、5 mg で有効との報告もあります。(Preetha Anand;MOLECULAR PHARMACEUTICS ,vol.4,no.6,807-818)

また、クルクミンとピペリンの用量比率が 100 : 1 が至適とされるとの報告もあるため、(Panahi Y;Complement Ther Med. Oct;22(5):851-7. 2014)、さらに少量でも有効である可能性があります。

刺激の強いピペリンは、欧米人では20 mg が限度とされていますが、胃腸が弱い日本人では5 mg 前後が臨床用量(有効性と安全性を考えて推奨する量)であると考えます。

スクワレン+ピペリン配合による作用

クルクミンにスクワレンとピペリンを配合することで、脂溶性であるクルクミンは、不飽和脂肪酸であるスクワレンで溶かした状態(油状)で小腸から吸収されますが、小腸の壁面に張り付いて吸収される過程で、ピペリンが腸壁でのクルクミンのグルクロン酸抱合を阻害することによりさらに吸収率を高めることになります。(レキオファーマ社:特許第4012894号)

用語解説

Tmax(最高血中濃度到達時間)
薬物投与後、血中濃度が最高濃度に到達するまでの時間。

薬物投与後の血中薬物濃度のグラフ(薬物血中濃度-時間曲線) は、横軸を経過時間(0~Tmax)、縦軸を血中薬物濃度として描くと、血中薬物濃度は時間0からTmaxまでの間に最大値Cmaxまで上昇し、そこを頂点にしてその後は低下するという山形の曲線になります。

Cmax(最高血中濃度)
薬物投与後の血中濃度の極大値。

薬物投与後の血中薬物濃度のグラフ(薬物血中濃度-時間曲線) は、横軸を経過時間(0~Tmax)、縦軸を血中薬物濃度として描くと、血中薬物濃度は時間0からTmaxまでの間に最大値Cmaxまで上昇し、そこを頂点にしてその後は低下するという山形の曲線になります。

AUClast(血漿中濃度時間曲線下面積)

0時間から最後に定量下限を上回った濃度が測定された時間までの血漿中濃度時間曲線下面積

AUC90min

0~90分までの血漿中濃度時間曲線下面積